2014年11月04日
遺留分減殺請求権について
こんにちは。
スマイル相続センターです。
11月に入り、だんだんと早朝や夜の寒さを感じるようになってまいりましたが、皆様いかがおすごしでしょうか。
さて、本日は遺留分減殺請求権についてお話ししたいと思います。
まず遺留分とは、一定の範囲の相続人に対して、被相続人の財産の一定割合について相続権を保障する制度を言います。
そして、遺留分減殺請求権とは、贈与や遺贈などを行ったため、この遺留分について侵害があった場合に、贈与や遺贈※などの処分行為の効力を奪うこと(減殺)を内容とする権利をいいます。
※遺贈とは、遺言によって無償で財産的利益を他人に与える行為を言います。
言葉で表しても、ピンとこないと思いますので、以下、具体的な事例から考えてみましょう!
AB夫婦は夫婦仲が悪く、いつも喧嘩しているような状況であり、Aは病気で余命いくばくもない状態で入院中でした。また、夫婦間には子どもがおらず、Aの両親、兄弟姉妹はすでに死亡していますが、Aには甥Cがいました。Aは、Cが子どもの頃から面倒を見ており、自身の子のように面倒を見てきました。CもAを実の親のように慕っており、毎日Aのお見舞いにいき、看病などを熱心に行ってきました。これに対しBは、Aと夫婦仲が良くないこともあり、Aが病気であっても、お見舞いに行くこともなく、全く無関心の状況でした。
Aは、このようなCの行いに大変感謝する一方、Bはお見舞いに一切来ることもなかったので、Bには財産を残さず、CにAの財産をすべて与えたいと思うようになりました。しかし、CはAの甥ではありますが、相続権はありません。そこで、Aは遺言書で「Aの所有する全財産をCに遺贈する※」といった文言を書きました。
このような遺言書を作成して1か月後、Aは病気で亡くなりました。その後、Aの身辺整理をしていたところ、Bは上記の遺言書を発見しました。
この遺言書を見て、Bは怒り、「Aとは夫婦の関係であったのだから、B自身にも遺産が分け与えられるべきだ」とCに主張したとします。このような主張は認められるでしょうか?
感情的には、Aに対して何の看病も行ってこなかったBよりも、Cに全財産を遺贈したいと考えてしまいがちですが、民法1028条はAにも一定の限度で遺留分として財産が相続されることを保障しています。
民法1028条本文を見てみると、「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける」とし、1号で、「直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1」、2号で、「前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1」と規定します。
当該条文を踏まえて本事例にあてはめると、Bは本来Aから相続できるはずの全財産についての2分の1は相続することができますので、Cに対して遺留分侵害があるとして、遺留分減殺請求権を行使することができます。
本事例のようにAの相続人がBだけなど極端な場合はほとんどないので、現実にはもっと複雑な事例が多くなります。もし、遺言書の内容によって、自身の遺留分が侵害されていると考えるようなことがございましたら、お気軽に当センターまでご相談ください!
皆様が笑顔でいられますように。
代表 長岡
ワンポイント
遺留分減殺請求権があっても、遺留分侵害があって初めて、同請求権を行使できますが、個々の事案によって遺留分侵害があるかどうかは大きく異なります。また、相続分がある兄弟姉妹の方であっても遺留分減殺請求権はありません(民法1028条本文)。詳しくはお気軽に当センターご相談ください。
※参考文献 二宮周平『家族法 第3版』(新世社)