2015年01月28日
遺言作成で問題となる点について
こんにちは。
スマイル相続センターです。
前回は、普通方式の遺言の種類についてお話ししましたが、今回はそれらの遺言の作成方法で、問題となる点をご紹介したいと思います(各遺言の方式については、前回のコラムをご参照ください)。
◆自筆証書遺言◆
①自書かどうか
自書であること、すなわち遺言者自身の筆記で作成することが、法律上要求されていますので、パソコン、タイプライターなどで文書を作成しても自書とは認められせん。添付の財産目録のみがタイプライターによるものであっても、遺言を無効とした裁判例もあります(東京高判昭59・3・22)。
それでは、手が震える方のために、他人が添え手をして、遺言作成の補助をした場合には、自書と言えるでしょうか。この点判例は、自書の要件を充たすには、自書能力(文字を知っており、これを書くことのできる能力)を有し、かつ、補助が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、単に筆記を容易にするための支えを借りたにとどまるなど、添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡の上で判断できることを要するとします(最判昭和62・10・8。この判例の事案では、他人の誘導が見られるとして、自書ではないとしました)。
②日付
遺言には日付を記載しなければなりませんが、遺言能力がその時にあったかどうかを判断するためや、他の抵触する遺言との先後を決めるために、「年月日」の記載が必要となります。もっとも、年月日が特定できればよいので、「2015年の成人の日」と記載することなどは可能です(「昭和四拾壱年七月吉日」と記載した事案では、日の特定ができないとして、遺言は無効であるとしました(最判昭54・5・31))。
なお、日付の記載位置は特に決められていないので、遺言書を封入した封筒に記載されていても構いません。
③氏名
遺言者との同一性が確認できればよいので、ペンネームや芸名でも構いませんし、さらには氏や名前だけといった方法でも、遺言者との同一性が確認できるのであれば、構いません。古い判例ですが、「をや治郎兵衛」(「をや」は「親」の意味です)と記載した事案では、遺言の内容その他から遺言者が特定できる場合には、氏または名を自書するので十分であるとして、氏名の自書として有効とした判例があります(大判大4・7・3)
④押印
文書の正式性、確実性を示すためなので、実印である必要はありません。認印や指印でも構いません(最判平2・2・16)。
◆公正証書遺言◆
①証人資格欠格者の作成現場への立会
公正証書遺言を作成するには、2人以上の証人が立ち会う必要があるのは、前回述べたとおりですが、民法974条によると、遺言の証人又は立会人となることができない者は、(1)未成年者、(2)推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、(3)公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人、と定められています。この中でも、特に(2)について、立ち会ってしまう可能性が高く、問題となります。
判例は、証人が2人おり、その他に受遺者である遺言者の長女が同席していた事案について、民法で定められた証人2人が立ち会っている以上、たまたま当該遺言の証人になることができないものが同席していたとしても、この者によって遺言の内容が左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り、作成手続は違法ではないとします(最判平成13・3・27)。もっとも、学説上は、この判例に対する批判も強いので、民法974条の規定に該当する方の同席は避けた方がいいものと思われます。
②署名の代筆
遺言者が署名できない場合には、公証人が遺言者に代わって署名することができます(民法969条4号)。ただし、左手がリュウマチにより不自由だが、右手は使うことができるにもかかわらず、遺言者が嫌がり署名しなかったという事案では、この条文に該当しないとした裁判例があります(東京高判平12・6・27)。
③口授の方法
公正証書遺言は、条文上、遺言者が公証人に対して遺言の趣旨を口授し、それを公証人が筆記して、遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させるという方式により作成されることになっていますが、あらかじめ公証人が遺言者の希望にそって遺言を文書化し、それを遺言者に読み聞かせ又は閲覧させ、遺言者はその内容に対して、簡単な趣旨を述べるということも行われています。判例もこれにより公正証書遺言の方式に反するものではないとします(最判昭43・12・20)。
しかし、そうはいっても、条文上「口授」が求められているので、単にうなずくだけの場合(最判昭51・1・16)、間違いがなければ手を強く握るように説明して作成した場合(東京地判平20・11・13)、「はい、そうです」、「それでよい」と言った場合(名古屋高判平5・6・29、大阪高判平9・3・28)では、口授を欠くとしています。
◆秘密証書遺言◆
秘密証書遺言の文書を他人に作成したもらった場合には、その筆者の住所氏名を公証人に申述しなければなりません(民法970条1項3号)。
他人がワープロで作成した書面に、遺言者が署名と作成年月日の「拾五」という部分だけ自書したが、公証人にワープロ文書の作成者の住所氏名を申述しなかったという事案では、ワープロ文書を作成した者が筆者であるとして、その筆者の住所氏名の申述がないことから、遺言は無効であるとされました(最判平14・9・24)。
◆共同遺言の禁止◆
すべての遺言に共通して、2人以上の者が同一の証書で遺言をすることが禁止されています(民法975条)。したがって、共同遺言を行うと、当該遺言は無効となります。
共同遺言を認めてしまうと、各遺言者の遺言意思の自由を妨げることや、一部に無効原因がある場合など、複雑な法律関係が発生し、解決が困難になってしまうことを理由とします。
本コラムでは、比較的よく問題となりそうな部分についてご紹介しましたが、このほかにも、各遺言の作成方法について、さまざまなことが判例上問題になっています。遺言作成等でお困りの際には、当センターにお気軽にお問い合わせください。
皆様が笑顔でいられますように。
代表 長岡
ワンポイント
※参考文献・HP
二宮周平『家族法 第3版』(新世社)
「日本公証人連合会」http://www.koshonin.gr.jp/index2.html