2016年09月13日
「花押」は自筆証書遺言の「押印」にあたる?
こんにちは。
スマイル相続センターです。
以前当コラムで、自筆証書遺言について、お話ししました。この自筆証書遺言は、遺言を有効なものとするために、「押印」をする必要があるのですが、最近、この「押印」についての最高裁の面白い判決(最判平成28・6・3)が出ましたので、少しお話したいと思います。
問題となった事案では、自書遺言の本文、日付、名前を自書し、名前の下に「押印」の代わりに「花押」を書きました。
歴史好きの方なら分かるかもしれませんが、花押とは、古くは日本の武士等が署名の代わりに用いた記号です(近年の総理大臣もみな花押を持っていますので、興味のある方は、http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/heisei.htmlを参照してみてください)。
花押自体は、その人のみ用いるものなので、オリジナリティがあるものといえます。では、この花押に押印と同じ効力が認められるでしょうか。
最高裁は、この点について以下のような判決を下しました。
まず、自筆証書遺言に押印が必要な趣旨については、「遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにある」とします。
皆様も契約書に押印したことがあると思いますが、押印をすることで、その契約書について、問題ないものとして、契約を成立させるという意識があるものと思います。
ところが、花押については、「我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い」ので、「花押を書くことは,印章による押印と同視することはでき」ないとしました。
確かに、花押を今でも使う人は数少ないですし、契約書に花押を書かれたとしても、正直意味が通じない可能性もあります。そうすると、花押が押印の代わりになるというような慣行もありませんし、私たち自身も花押が押印の代わりになるというような意識もないと言えるでしょう。
この判例の事案は、家督相続といった古い習慣がある家柄だからこその特殊な事案ではありますが、歴史好きな方で自身の花押を持っているというような方は、自筆証書遺言作成の際に、押印ではなく、花押を書かないように注意してください。
皆様が笑顔でいられますように。
代表 長岡
ワンポイント
自筆証書遺言は、「押印」等の要件を欠きますと、効力が発生しませんので、自筆証書遺言を作成する際の注意点については、当センターへお気軽にお問合せください。