2016年10月04日

内縁関係と相続

〔事例〕
AとBは、同居して共同生活を営む等、夫婦同然の生活をしており、婚姻意思はあるものの、両者の両親から婚姻を反対されたので、両親が婚姻に賛成してくれるまでは、婚姻届を出さないこととしていました。ところが、AとBが婚姻届を出す前に、Bは不慮の事故に遭い、亡くなってしまったことから、相続が開始されることになりました。このとき、Bの父Cと母Dが存命でしたが、Aは、C及びDに対して、遺産に関して財産分与を請求することはできないのでしょうか。


こんにちは。


スマイル相続センターです。


今回も事例形式でお話ししたいと思います。


事例のようなAとBの関係のことを、内縁関係といったりします。このような内縁の夫婦は、法律上の婚姻をしている夫婦と法的にどのような違いが出てくるのでしょうか。


まず、内縁の夫婦は、婚姻届を出していないものの、互いに協力して共同生活を営んでいる実態は、法律上の婚姻による夫婦と変わりがないため、同居・協力・扶助義務(752条)、婚姻費用の分担(760条)、日常家事債務の連帯責任(761条)、財産分与(768条)等の規定の準用ないしは類推適用が認められます。


このように、内縁の夫婦もまた、法律上の婚姻による夫婦と同様の権利・義務を持つこともあります。


一方で、内縁の夫婦は、あくまでも法律上の婚姻はしていないので、一方の配偶者が死亡した場合、他方の配偶者は相続人となることはできません。しかし、相続権がないと、他方の配偶者は何らの財産も相続できず、生活に困窮することも考えられます、そこで、内縁夫婦のうちの生存配偶者は、内縁関係を両者が生存中に解消したように、財産分与の規定を類推適用することはできないでしょうか。


この点に関して、判例(最判平12・3・10)は、内縁夫婦の一方が死別して、内縁関係が解消した場合には、他方の配偶者に対して、財産分与の類推適用することを認めません。


その理由としては、「相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである」と判示しています。


判例の言いたいことは、要するに、財産分与は生きている人同士の場合であって、死亡した場合は相続によるべきであるから、財産分与の制度を相続の場合にまで適用することは、民法が想定していないということです。


したがって、判例の考えを前提とすると、事例のAは、C及びDに対して、財産分与の請求をすることはできないことになります。


もちろん、判例の考えには、学説から批判もあります。すなわち、内縁夫婦がたとえケンカして別れたとしても、財産分与の規定の類推適用がなされるのに、終生協力して生活を営んでいた内縁夫婦の内縁関係の死亡解消の場合には、むしろ保護がなされないというのは、不公平であるということです。


学説の考えも理解できることではありますが、前述したように、判例では、内縁夫婦の死亡解消の場合には、財産分与の規定の類推適用を認めていませんので、実務もこの考えに従う必要があります。


では、内縁夫婦が他方の配偶者を保護するにはどのように考えるべきでしょうか。


これは、遺言書を書くことにより、他方の配偶者を保護することが考えられます。


金銭や不動産を他方の配偶者に遺贈する等の内容を、遺言に書くことによって、実質的に相続したことと近い形になるよう、他方の配偶者を保護することができます。


死亡配偶者の相続人からの遺留分減殺請求権行使により、全額遺贈できることにはならない場合もあるとは思いますが、それでも、一定の額は確保できるため、内縁関係にある夫婦は、転ばぬ先の杖として、他方の配偶者のためにも、ぜひ遺言書を書くことをお勧めします。


皆様が笑顔でいられますように。


代表 長岡

ワンポイント

内縁とは別に、事実婚というものも講学上は存在します。内縁は、婚姻しないことは、両当事者の意思ではなく、やむを得ずに婚姻しない(できない)というニュアンスを含むとされますが、事実婚については、両当事者の自発的な意思によって、婚姻をしないというニュアンスを含んでいるとされます(例えば、夫婦で姓を統一することに抵抗があるため婚姻しない等)。 事実婚についても、学説上内縁と同様に保護すべきだとする見解がありますが、自発的に婚姻をしていないのだから、内縁と同様の保護を与えることはできないとする見解など、さまざまな見解があります。 参考文献:二宮周平『家族法 第4版』新世社

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