2016年10月31日

相続回復請求権とは

〔事例〕
Aには、夫Bと子C、Dがいましたが、Dについては、Bと大喧嘩をして実家を出て以来、長年連絡を取っていませんでした。Aが死亡し、B、C、Dでそれぞれ共同相続することになりましたが、BはDのことをいまだに良く思っておらず、BとCとでの話し合いの上、Aの遺産については、B、Cだけで相続し、Dには連絡しないことにしました。Aが死亡してから25年後、たまたまDはAの旧友であるEと話す機会があり、その時にAが死亡した事実を知りました。Dは、B、Cらに自己の相続分を主張することはできないでしょうか。


こんにちは。


スマイル相続センターです。


今回は相続回復請求権についてお話ししたいと思います。


相続回復請求権とは、真正相続人が、表見相続人(本来相続人ではないのに、相続人であるとして、相続権を侵害している者)に対して相続財産の回復を求めることのできる権利です。一方で、表見相続人を真正相続人と信じて取引関係に入った第三者を保護するため、その権利行使の期間制限も設けています。


では、相続回復請求権を規定している民法884条を確認してみましょう。


「相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする」


この条文が適用される典型例としては、被相続人の相続人は子だけであるのに、被相続人の兄弟姉妹が遺産を占有している場合などが典型例です。


さて、ここで上記の事例についてみてみますと、典型例とは異なることに気づくでしょうか。上記の事例はBもCも、Aの相続人ではあるということです。ただ、共同相続人であるDを除外して相続しているということになります。


このような場合にも、884条の適用はあるのでしょうか。884条の適用があるとすると、期間制限により、Dは、自己の相続分を取り戻せなくなる可能性があります。


判例(最判昭53・12・10)は、この点について、共同相続人間でも884条の適用はあるとしつつ、他の共同相続人の相続分を侵害している相続人は、他の共同相続人がいること及びその相続分を侵害していることを知らず、かつ、知らなかったことについて合理的事由がなければ、884条の適用は排除されるとします。
つまり、884条の適用がないとなると、相続分を取り戻すことの期間制限はなくなるわけです。


事例についてはどうでしょうか。BとCは、Dという共同相続人がいることを知っていますよね。ですから、884条の適用はないので、Aが死亡してから25年経っていても、期間制限なく、BとCに対して自己の相続分をよこせと主張することができるわけです。


事例のように、他の共同相続人に連絡せず、勝手に相続してしまうということは、現実問題としてよくありそうな話ですが、相続関係で争いにならないためにも、くれぐれもご注意ください。


皆様が笑顔でいられますように。


代表 長岡

ワンポイント

参考文献:二宮周平『家族法 第4版』(新世社)

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