2016年10月01日

養子縁組と相続

〔事例〕
Aは、自分に相続人がいないことから、自分の老後の面倒を見てもらうことと、その財産を相続させるつもりで、日頃から親しくしているBを養子にしました。養子縁組時、Bには、妻Cと子どもDがいました。
その後、Aの面倒を見ていたBですが、養子縁組から1年後突然の事故で亡くなってしまいました。
Aは、Bに妻Cと子どもDがいることを知っており、二人のことを不憫に思い、毎月10万円の援助を行っていましたが、そのAも、養子縁組から5年後に病気のため亡くなりました。
Aの遺産は、約3000万円になりますが、C又はDはこの遺産を相続できるでしょうか。


こんにちは。


スマイル相続センターです。


いきなり事例を挙げましたが、答えは後にして、今回は、養子縁組についてお話ししたいと思います。


養子縁組とは、人為的に法律上の親子関係を作り出す制度です。つまり、法律上親子関係にない者を、養子縁組手続をすることで、親子にしてしまおうということです。


こんな説明をすると、成年者と未成年者との間で用いられる制度かな、と思うかもしれませんが、日本では圧倒的に成年者同士での縁組が多くなっています。成年者との養子縁組と、未成年者との養子縁組の比率が近年では約80~90対1程度となっていることからも、その差がわかります。


では、なぜ成年者同士の養子縁組が頻繁に行われるのでしょうか。これは、相続人がいない場合に、その財産を継ぐ者として、養子縁組をすることが考えられます。現代日本でも地域によっては、まだまだ家制度の風習は残っていますから、「お家」を断絶させないために、養子を取るということは多くあります。例えば、婿養子なんて言葉も、婚姻と同時に妻の父母等の養子になってその家を継ぐということを意味するので、これも家制度の風習の一種と考えてよいかもしれません。


また、未成年者との養子縁組は、家庭裁判所の許可が必要なので、役所への届出だけで済む成年者との養子縁組と違い、手続の厳格性がより求められる部分も、未成年者との養子縁組が少ない要因でもあるかもしれません。


さて、養子縁組とはどのような制度かおわかりいただけたでしょうか。次に、その効果について説明したいと思います。


養子縁組をすることで、養子は、養親の嫡出子としての身分を取得します(民法809条)。嫡出子は、婚姻関係にある夫婦の間の子どもという意味です。
ただし、養親の嫡出子としての身分を取得したとしても、実の両親との親子関係も残ります。つまり、二重の親子関係となるわけです。


そうすると、養親との間でも相続は発生するし、実親との間でも相続が発生することになります。これが養子縁組の最大の特徴でもあります。


ただし、養子縁組は、養子だけを養親の親族にするというものですので、縁組後に生まれた養子の子は養親の親族になりますが、縁組前に生まれていた養子の子は、親族にはなりません。


ここで、事例の答えについてお話ししたいと思います。まずCについては、Bの妻ですが、Aとは何らの親族関係は発生していません。したがって、特別縁故者にあたる場合(Aの療養看護をしていた場合等)を除き、原則としてAの相続財産の分与を受けることはできません。
そして、Dについても、Bの養子縁組「前」に生まれた子どもですから、Aとの親族関係はなく、Bに代わって相続人になるという代襲相続の効果は発生しません。


以上のように、CもDも原則として相続財産の分与を受けることはできないので、Aの立場から、CDに相続財産を残したい場合には、C又はDと養子縁組をすることや、遺言書等で遺贈をする必要があります。


今回は趣向を変えて、事例形式でのコラムとなりましたが、いかがでしたでしょうか。
少しでも楽しんでコラムを読んでいただけたら幸いです。


皆様が笑顔でいられますように。


代表 長岡

ワンポイント

今回お話ししたのは、普通養子縁組についてですので、ご注意ください。特別養子縁組という制度も存在しますが、普通養子縁組とは、手続も効果もかなり異なります。特別養子縁組についても、いつかの機会に触れられたらと思います。

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